2012年12月31日

体験型エンタテインメント 2011〜2012 総まとめ


2012年も大晦日となりました。2010年の総まとめ以来1年開いてしまいましたが、「体験型エンタテインメント 2011〜2012 総まとめ」をお送りいたします。2010年分と合わせて、これまでのARG情報局の総決算となるこのまとめ記事が、皆さまのご参考になれば幸いです。

この記事で用いる用語について


最初にこの記事での用語について簡単に整理しておきます。

ARG情報局では、参加者が能動的に関わっていく娯楽全体を「体験型エンタテインメント」と呼んでいます。その大きなくくりの中で、謎解きを中心に据えた公演型イベントを「体験型謎解きイベント」、代替現実感を重視した主に長期型の企画を「代替現実ゲーム(ARG)」と位置づけています。

詳しくは「体験型エンタテインメントの要素と「ARG」の定義」を参照してください。体験型謎解きイベントとARGの構造的な相違点につきましては、SIG-ARG第4回セミナーでの澤田さんの講演も詳しいです。

キーワード


2012年末現在の日本における体験型エンタテインメントの状況を端的にまとめると、以下のようになるでしょうか。

  • 体験型エンタテインメントの多様化
  • 体験型謎解きイベントの制作者層の成熟

以下、各キーワードについて解説します。


体験型エンタテインメントの多様化


ARGの多様化


2011年は模索の年でした。ARGとしては、トヨタと電通が組んだヴィッツARGや、ゲームデベロッパーの元気が仕掛けた元気ARG「ぼくらの選択」(現在は元気はARG事業を休止)、そして草の根(grassroots)ARGである参会の BUBBLEGUM(現在はチームだいたいが bubblegum として運営)、「世界侵略:ロサンゼルス決戦」のDVD販促ARGなどが実施されました。これらは、欧米型ARGの構造・方法論を踏まえた上で、如何に国内の諸条件下で成立させるかの試みが行われていたと考えることができるでしょう。

2012年になると、多様化が進みます。草の根ARGとしては、「月齢14.9の夜」のような従来型のARGが引き続き行われた一方で、「龍宮学校 ARG部」や「名も無き少女」はアートとしての活動の一環にARGを取り込んだものでした。また、劇場版BLOOD-CのプロモーションARG「SIRRUT.NET」ではスマホ向けゲームとの融合が試みられ、フジテレビの「アイドリング!!!」の1コーナーとして実施中の「Mのスマイルゼリー研究所」ではバラエティ番組の文法で視聴者参加型のARGを行うという新しい試みが行われています。さらに、2011年から2012年にかけて、結果的にもっとも大規模なARG事例となった明治 果汁グミのプロモーション「メグミとタイヨウ」は、欧米のARGの流れとは全く別に、参加型プロモーションを追求していった結果として生まれてきた企画でした。

欧米のARGは、ハリウッド映画のプロモーション手法として大々的に実施されてきた(例: ダークナイトARG「Why So Serious?」)流れがありますが、国内ではそこまで大きな映画宣伝予算をARGに付けられる予算規模ではなく、またARG自体の実績にも乏しいというのが日本国内の現状です。2012年は、そんな状況下でもARG的な娯楽を作りたいと望む制作者が、欧米型のARGフォーマットに囚われず、各自の環境でできることを始めた結果として多様化が進んだ年、と言えるかもしれません。

そうした点で特徴的なのが、2012年の夏に結成されたチームだいたいの動きです。街歩きARGと銘打っていた「オレンジ探偵団」は、基本的なゲーム構造は街歩き型の謎解きイベントでありつつも、探偵の井津本 端だけ、毎回同じ役者が登場して参加者と交流することにより代替現実感のスパイスを加えていました。また、映画「悪の教典」のプロモーションイベントであった「リアル悪の教典ゲーム」では典型的な体験型謎解きイベントの形式に則りつつも、代替現実的な手法による事前情報ページを提示し、また、イベント内でも役者の演技や演出、会場のセットなどにこだわることにより、公演型のイベントでありながらも高い没入感を生み出していました。このように、国内でフォーマット化されてきた謎解きイベントをベースに、代替現実的な楽しさをプラスしていくようなアプローチは手堅い手法ですので、来年以降増えていく可能性は高いでしょう。

体験型謎解きイベントの多様化


ARG以外の体験型エンタテインメントでは、なんといっても体験型謎解きイベントの多様化は目覚ましいものがあります。制作者が増えてきたことについての言及は後に譲るとして、ジャンルとして定番化したことによる多様化の流れ(主に SCRAP の動き)に触れましょう。

体験型謎解きイベントでは中心的存在である SCRAP は2011年〜2012年にかけて、大規模な公演を次々と行っています。2012年で人気が高かったものを挙げても、映画「宇宙兄弟」とのコラボイベントの「月面基地からの脱出」では札幌・仙台・福岡・東京・名古屋・大阪の全国ツアーを行い、計30000人が楽しみました。また、バイオハザードとのコラボの「ある廃病院からの脱出」では東京のみの開催でしたが、実際の廃病院での実施ということで高い人気を得て12000人が参加しています。一方で中規模や小規模の体験型謎解きイベントも忘れていません。SCRAP は1万人規模のコアなファンを抱えていますので、中規模や小規模のイベントではすぐにチケットがなくなってしまうという問題がありました。それに対応するため、定員10名で毎日公演を行うアジトオブスクラップを2011年7月に東新宿、2012年4月に京都に立ち上げ、また、2012年4月には原宿に中規模イベントを毎日実施できるヒミツキチオブスクラップを構えて、それぞれロングラン公演することで中小規模の企画でもトータルで1万人程度に体験してもらえる体制を整えました。

このように従来型の体験型謎解きイベントに関しては、常設化し、万全の布陣を整えた SCRAP は、並行して参加者層の拡大にも取り組んでいるようです。前述の全国ツアーもそうですし、2011年9月からは上海・北京・シンガポール・サンフランシスコ・台湾・ソウルなど、海外での公演にも力を入れています(上海と台北にはアジトオブスクラップも)。また、リクルートと組んで実施した「リアルな出逢いがある脱出ゲーム ヴァンパイアホテルからの脱出」や、サンリオピューロランドで実施した「ピューロ魔法学園へようこそ!」など、これまでのファン層とは違う層へ向けたイベントも積極的に制作しています。

また、従来型の体験型謎解きイベントとは違うメディアにも取り組み始めています。スマートフォンで遊べる一週間ゲームシリーズや、書籍の脱出ゲームブックシリーズなど、リアル脱出ゲームブランドを使った他メディア展開がその一例です。その中でも特に大きな動きと言えば、代表の加藤さんが惚れ込んでいるリアル脱出ゲームオンライン REGAME でしょう。2012年7月に実施された「ホーンテッドハウスからの脱出」は無料でアーカイブ版をプレイ可能です。続いて12月には第2弾「サイレントキューブからの脱出」が実施されました。大勢が時間を合わせて一斉にプレイするという同時性が、従来のオンラインの脱出ゲームと異なる所です。この同時に謎解きをやる、という部分にフォーカスを当てたもう一つの企画が、2013年1月1日23時59分開始のリアル脱出ゲームTVです。1時間でリアルタイムで流れるドラマと同じ問題をWebサイト上でチャレンジできるというこの番組は、謎解きという仕組みの限界を試す試金石になるのではないかと楽しみにしています。

さて、SCRAP だけで実施する企画がこれだけ多様化してくると、必然として代表の加藤さんが全てを見れなくなってきます。これまでの SCRAP は(特に東京は)、「SCRAPの企画=加藤さんの企画」のように見えていましたが、もう通常イベントの運用は加藤さん抜きで進められる体制が整ったようです。これは、加藤さん以外が主導したコンテンツがリアル脱出ゲームブランドで出てくることによって多様性が増す(一週間ゲームなどはその典型でしょう)ことと同時に、加藤さんが次の「面白いこと」を考えられるようになったことも意味します。

SCRAP のリアル脱出ゲームは、当初の知る人ぞ知る尖った遊びから、多くのファンが居るいつでも体験できる遊びへと変化しています。そして、それに応じて組織も大きくなりました。これは保守的になってしまう典型的な流れではあります。しかし、加藤さんが「僕らが面白いと思ったことをやる」という気持ちを持ち続けている限り、来年はさらに多様な体験型エンタテインメントを見ることができるのではないかと期待しています。

また、後述しますが、体験型謎解きイベントを手がける団体が SCRAP 以外にも増えています。増えているのは楽しみのためにやっている小規模な制作者集団が多いのですが、クライアント側とのビジネス的な橋渡しを行える人たちも機能し始めていますので、受託系の案件では、来年は SCRAP 以外が実制作を行う事例がさらに増えてくることでしょう。(なにぶん、SCRAP さんがお忙しすぎるので……)

制作団体が多様化するに従って、作られるものも多様になってきています。特に、謎解きの知的チャレンジをどれだけ重視するかは様々で、謎解きを通して仲間とわいわい楽しむことをメインに置いている東京ボウズのようなスタイルや、あるいは家族連れをターゲットに、謎ではなく動物とのふれあいを重視した「伊豆シャボテン特捜隊 アニマル・ミッション」など、公演型イベントでも楽しみ方は多様化してきています。

その他の動き


前回の2010年のまとめで取り上げていた日本独自の体験型エンタテインメントのうち、残りの2大勢力である宝探しとミステリーの現状についてもまとめておきます。

宝探しイベントは、相変わらずタカラッシュ!の一強の状態が続いています。震災の影響もあってか2010年をピークにイベント実施数は減っていますが、全国の観光地やテーマパークなどで宝探しイベントを企画しています。また、こちらも参加層を広げる試みも行っており、例えば、大人の女性をターゲットにした展開で、お洒落なレストランでディナーを取りながら謎解きをする「Closed Restaurant」を始めとした OZmall と組んだ企画を継続して行っているようです。また、オンラインの比重を高めていることも面白い動きで、前回の賞金200万円の「タカラッシュ!GP」では、前半戦が Google Maps 的なオンライン地図上で行う宝探しとなっていました。同じシステムを使った CLICK MAP という面白い有料宝探しコンテンツも始まっています。一方で、リアルも重視しており、『「宝探し」は、スポーツだ。』のコピーで「SAGASE」を新しく展開しています。その他、「ナゾラボ」や「CRAZY GAMES」など、宝探しではない体験型企画にもトライを続けているようです。なお、地域活性型企画者としては、各地に密着した形で謎解きイベントを制作する会社も出て来ています。ネットとリアルで体感ゲームGainJapanサプラニアなどです。

参加型本格推理イベントに関しては、やはりイーピン企画が大きな存在感を保っています。「ミステリーナイト」は今年25周年を迎え、安定した集客を続けていますし、3年前から始めた、より少人数で没入感の高いミステリーイベントを提供する「ミステリー・ザ・サード」も順調です。最近では事前情報ページにARG的な手法を取り入れるなど、ミステリーイベントとしての枠の中で毎回工夫を凝らしているようです。他団体では、大阪・神戸・東京・水戸・秋田などでも参加型本格推理イベントは行われていますが、大きな動きがあるという状況ではありません。しかし、一風変わった『推理展示-殺人事件-』などのように、体験型謎解きゲームの制作者が増えてくるに従って、そこから推理という方向へ延びてくる動きが出てくる可能性はあります。今後、どのような化学反応を起こしていくか、要注目かもしれません。

その他、プロモーションで、体験型の要素を持つ企画も多く実施されるようになってきました。ガムの新フレーバーのプロモーションとして行われた「ストライド 1000万円埋蔵金伝説」では、謎を解けた先着1名に1000万円という巨額賞金が話題になりましたが、内容のほうも様々なサイトや現実の場所を辿る、ARG的な手法を用いたキャンペーンでした。また、グリコ アイスの実のプロモーションとして実施された「AKB48殺人事件」は連作CMで徐々に情報が出てくる中、真犯人を推理するという企画で、青山剛昌原作ということも話題になりました。一方、NECのスマートフォンのプロモーション「徳井義実解放作戦」では、徳井氏を新宿駅前で五角柱の部屋の中に閉じ込め、リアルタイムで twitter で外部の人たちと協力しながら2時間以内に謎を解いて脱出するというもので、脱出ゲームをショウ化するという新しいアプローチでした。

リアル脱出ゲームのメディアでの露出が増え、また、参加型本格推理イベントへのメディア取材も増えていると聞きます。国内で体験型の企画に対してメディアの注目が集まってきており、結果として色々な分野から新しい体験型企画が出始めているということかもしれません。

なお、コンテンツ自体に世界観があるため体験型企画と相性の良い、ゲームやアニメのプロモーションとしましては、前述の劇場版BLOOD-CのARGの他、ガストのゲーム「シェルノサージュ」のプロモーションとしてゲーム誌編集部に未知の言語や風景の謎の資料が届けられてファンがよってたかって言語解読などをしていた件や、TVアニメのソードアートオンラインの放送と連動して出されるクエストをクリアしてクリアコードを公式サイトに登録するとポイントが貯まっていく「ソードアート・クエスト」(まとめWiki)など、面白い企画も増えてきています。来年はこちらの線からも増えていく可能性は充分にありそうです。

体験型謎解きイベントの制作者層の成熟


インディーズ文化の成立


体験型エンタテインメント界隈で、この2年で最も状況が変化したのは、体験型謎解きイベントでしょう。SCRAP が先鞭を付けたこのジャンルは、SCRAP が良質なイベントを実施し続けたことにより、強固なファン層を作り上げることに成功しました。それが2010年のことです(2010年末からSCRAPの大規模イベントの参加者数が1万人前後で張り付くようになります)。

それから2年。体験型謎解きイベントを日常的に体験するようになったコアファン層の一部は、やがて受け手から作り手へと変わっていきました。その象徴的なイベントが2012年11月に行われた謎制作団体のお祭り「謎フェス」です。

謎フェスでは20団体近く参加しましたが、その中で体験型謎解きイベントを制作している団体のほとんどは2011年〜2012年にかけて謎解きイベントの制作を開始しており、様々な形で SCRAP の影響を受けています。(参考:制作者インタビュー:東京ボウズ・HAT‐CRi・RDG

謎フェスでは出展者以外に200人〜400人程度の参加者が集まりましたが、この人たちを中心とした数百人〜千人程度がコアなファン層だと考えられています。そうしたファン同士が、参加者として楽しみながら、時には制作にも回る、という形でお互いの作るコンテンツを楽しみ合う、そんな状況が出来上がっています。

この構造は、小劇場演劇やインディーズバンド、あるいは同人に例えてもいいかもしれません。こうした体験型謎解きイベントのインディーズ文化が成立した、というのがこの2年の最も大きなトピックとなるでしょう。

情報は、インフルエンサーである @10s4 さんの作るイベントカレンダーを核としながら、twitter やメールなどの口コミで広がってきました。

ここに、2012年11月に参加体験型イベントレビューサイトの「なぞとも」が加わり、さらにインディーズ文化の輪が広がるかどうかが期待される、というのが現状です。

体験型謎解きイベント制作を本業に


ファン層がある程度固まってきたために、SCRAP 以外でも、体験型謎解きイベント制作を本業として生計を立てられるケースも出て来ています。2011年に会社化した東京ボウズの他、2012年春に設立のイベンティア、また北海道で謎解きイベントを精力的に制作し続けている北海道リアルミステリーなどです。

パブリッシャー的な団体の登場


このように、制作者が増えてくると、制作者同士のコラボレーションも増えてきます。そうした中で、徐々に、会場の手配や宣伝をするのが得意な団体と、謎の実制作に集中したい団体が分業を始めたりしていきます。そうして、いわゆるパブリッシャーとデベロッパーに近い役割分担が生まれてきています。

もともと何らかのコンテンツを作っているバックボーンがある団体が、パブリッシャー的機能を持つようになることが多いようです。これらの団体は基本的には内制も可能なのですが、それぞれ様々なコンテンツ業界との繋がりが深く、企画が立ちやすいことから、他の制作団体と協力して案件に取り組んでいくことになります。

具体的には、PCゲーム関連などの案件が得意で、南晃氏やチームだいたいなどと組みつつ、来年は千石一郎さんも謎制作にゲスト参加する企画もあるイベンティア、謎組やチームだいたいなどと組みつつ、「なぞとも」も立ち上げた WonderQ、アニメ系の案件が得意で、がすけつ氏やTAMGRAMなどと組みつつARGの制作も行うラ・シタデールなどが挙げられます。

また、SCRAP も、学生チームと協力して新しい企画「どうしてこうなったシリーズ」を立ち上げたり、ヒミツキチオブスクラップを他の謎制作団体に貸し出したりと、外部とのコラボレーションを積極的に行うようになってきています。

こうした制作団体同士の役割分担による制作体制が整ってくると、謎解き界隈の外から来たコラボレーション案件をどんどん受けていけるようになり、また新しい展開が広がっていく可能性が高まります。

今後の展望


ARG情報局は体験型エンタテインメントの普及に主眼を置いていますので、以下、楽しむ人たちが増えていくのか、という観点での展望となります。基本的に、一般向けにするほどコンテンツは丸くなっていきますが、そこは何とか踏ん張るという前提で。

謎解きという要素に関しては、2つの規模での話があります。ひとつは、現在数万人規模で留まっている国内の体験型謎解きイベントのアクティブプレイヤーをいかに増やしていけるか。これは、面白さを保ったままで如何に多くの人が楽しめる娯楽へと変換できるかにかかっています。一番勝算が高いのは、SCRAP が一般向けのコンテンツを作り慣れているところとコラボして進めていく企画が何か結実すること、ですが、制作者も増えてきていますので、それ以外の所から出てくる可能性も充分にあります。

もうひとつは、体験型謎解きイベントをインディーズ含めて楽しんでいる層がどれだけ広がっていくか。こちらは、ジャンル全体がお約束で雁字搦めになり、素人さんお断り的な雰囲気が醸し出されてくると危ない兆候ですが、幸い今の制作者の面々を見る限りは多様な楽しみを提供していけそうなので安心です。「なぞとも」など、新しく興味を持った人が分かりやすい場がどれだけ揃っていくかがポイントですね。参加者総数が1000人を越えるイベントをどこかが実現できれば、ブレイクスルーが待っているかもしれません。

さて、一方で、ARG情報局がメインで扱っている代替現実ゲーム(ARG)の直近の展望はどうか、という話になりますと、正直なところよく分からない、というのが回答となります。少なくとも欧米のように映画の宣伝広告費ですごいものがいきなり登場する可能性は少ないのですが、コンテンツ大国の日本ですので、どこのコンテンツにくっついて ARG が展開を開始するかは予断を許しません。関係者の事例の積み上げの努力あって、少しずつ制作側の認知は広まっていると思いますので、あとは機会と予算と人材がかみ合ったタイミングで、様々なスタイルの ARG が実施されていくのではないかと思われます。

本来ならば、ARGの単独企画で収支が回る状態になるのが一番健全なのですが、そのためにはもうしばらく時間がかかるでしょう。ARGにお金を払うことが当然だと思っているプレイヤーを数千人以上の規模で育てるにはどうすればいいか、というところからARG業界関係者は考える必要があります。既存のIP、ないしは既存コンテンツのクリエイターと組んで事を進めるのが近道ではありますが、はたしてどこから登場するのかは読めません。

体験型エンタテインメント全体につきましては、世間的な方向性は、マスで一方的な情報発信から、より個々人の体験に近いものが好まれる方向へとシフトして行っていますので、良いプラクティスが広まるにつれ、類似の体験型企画の事例も増えていくでしょう。ただし、「メグミとタイヨウ」が、タイヨウ君の恋路を応援するという構造だったから人気を博したように、分かりやすく、楽しさを感じやすい参加の仕方をよく考える必要はあります。もっとも、ミリオンタイトルになっているレイトン教授シリーズを考えると、ナゾ解きでも味付け次第、ということなのかもしれませんが。

もっと先、5年後の展望はといえば、1年前に書いた「【コラム】日本のARGの5年後に迎える5つの姿」のイメージを未だに持っていますが、その未来の鍵の一つは、謎フェスで見た熱気の行き着く先が握っていると感じています。

日本で特異的に盛り上がっている体験型謎解きイベントの制作者集団が様々な化学反応を起こして作り出す新たな体験型娯楽が、謎解きという枠を飛び越えて、新たな遊びの提案になっていく未来を期待しています。

それでは、長くなりましたが、以上で現時点での体験型エンタテインメントの総括とさせていただきます。来年の体験型エンタテインメント界も、1プレイヤーとして、とても楽しみです!

(追記: 大晦日の23時から Twitter ラウンドテーブル「2012年の体験型エンタテインメントを振り返る」を行いました: 2012年12月31日 ARGラウンドテーブル - Togetter

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