2020年3月11日

この時期だからこそやる意味があった。「参加型イベント・シアターのための特別セミナー」開催

(文:石川淳一)

「ミステリーナイト」など、さまざまな参加型ミステリーイベントを制作するE-Pin企画が創立20周年記念として、参加型・体験型イベント制作者向けのセミナー「参加型イベント・シアターのための特別セミナー」を2020年2月29日に都市センターホテルで開催しました。

開催タイミングは、新型コロナウィルスの感染拡大を懸念して政府が2月26日にイベントの自粛を要請したわずか3日後。参加型・体験型イベントを含むさまざまなイベントや施設が次々と開催中止や休業を決めた中、このセミナーも開催が危ぶまれましたが、
「さまざまなイベント制作者が苦境に立っている今こそ開催する必要があるのではないか」
というE-Pin企画 城島さんの強い信念で無事開催にこぎ着けました。
(残念ながらセミナー後に行われる予定だった立食形式の懇親会は中止になりましたが、これは仕方ないかと思います)

そして、マスクが手に入らないこの時期にひとりひとりにマスクが配られ、配付された資料に「新型コロナウィルス感染対策に関するお願い」が記載されるなど、E-Pin企画が掲げている理念「マナー、モラル、ホスピタリティ」を感じることができました。

また、自粛要請直後にもかかわらず、1人もキャンセルも欠席もすることなく参加いただき、このジャンルに対する期待と情熱をひしひしと感じました。



エレメンツ 石川淳一


一番最初に登壇した石川は「広がる参加型イベントと制作における5つのヒント」というテーマでお話しました。
前半は、あらゆるジャンルに広がりつつある参加型イベントについて、ジャンル別の簡単な解説。
メインの後半は、私が30年間ゲームデザイナーをやってきた経験や、参加型イベントに参加して感じた、どのジャンルであっても制作のヒントになりそうな内容を

  1. 受動と能動
  2. 題材
  3. トランスメディアストーリーテリング
  4. 距離感と「場」
  5. 作りやすさと参加しさすさ

の5つの切り口で話してみました。

オフィスバーン 五味弘文さん


東京ドームシティの「ミッション型おばけ屋敷」などで有名な五味さんは、このようなおばけ屋敷を作り始めたきっかけや、おばけ屋敷が他のエンターテインメントにない特性について。

オバケ屋敷は緊張と緩和によって成り立っているという話や、他の参加型エンターテインメントは没入感を高めるために、できるだけ客観性を排除して主観になれるよう工夫するが、オバケ屋敷で客観性の排除はエンターテインメントにならない(客観的な自分に戻れるから安心できる)という話はとても興味深かったです。

SIG-ARG副世話人のえぴくすさんも非常に参考になったとTwitterで。



E-Pin企画 城島和加乃さん


「ミステリーナイト」などE-Pin企画の参加型ミステリーをずっと牽引してきた城島さんは、演劇表現による物語性の作り方を中心に、「ミステリーナイト」の作り方の手順と、どのような点に気をつけながら物語体験を作っているかのお話。

ところがその最中に、最初に登壇した石川淳一さんが控え室で殺されるという事件が発生!(なんという事でしょう!!)
刑事を名乗る人物が会場に乗り込んできて、参加者にこの場を動かないよう釘をさします。

画像提供:E-Pin企画

城島さんは、この殺人事件? をモチーフに、目の前で起こった演劇による体験を具体例として説明しつつ、どのように演劇表現で物語を作っていくかの話に。
そして、石川淳一殺人事件の犯人が登壇者の中にいるということで、犯人当てのミッションが各参加者に出され、休憩となりました。

画像提供:E-Pin企画

E-Pin企画 かとうだいさん


休憩があけて、城島さんからまずは殺人事件の解説。
死体の写真と、セミナー開始前の記念写真の靴下の色が決め手となり、E-Pin企画 かとうだいさんが犯人だと判明しました。

画像提供:E-Pin企画

その後、犯人認定を受けての(笑)かとうさんのお話。

ミステリーナイトで特にこだわっている点として

  • 目の前で体感できる面白さを徹底追求している
  • 探偵が謎を解く手がかりの設計

の2つを中心に、具体例を交えながらのお話。

ちょっと驚いたのは、先に登場人物やプロットが作られた後に殺害トリックや犯人が決められている点。
てっきり、トリックと犯人を最初に決めた上で物語を作っているものと思い込んでいたのですが、こちらの方が楽しませる物語を決めた中で、誰が犯人だと意外性やおもしろさがあるかを考えられるとのこと。なるほどなあ。

スイッチ総研 光瀬指絵さん


非常にユニークな演劇集団「スイッチ総研」さんは、まず「スイッチ」の実演からスタート。
いろいろな参加型イベントを体験している参加者の方も、「スイッチ」はほとんど未経験のようで、みなさん前の方に集まって興味津々。
実演された3つのスイッチは、今回のセミナーをネタにしたもの。
初めて見る生「スイッチ」に場内は爆笑に包まれていました。

スイッチ」がどのようなものかは、スイッチ総研さんのサイトをご覧下さい。
https://switch-souken.tumblr.com/03whatswitch

実演のあと、「スイッチ」が生まれたきっかけや、スイッチを作る際に気をつけている事などが、光瀬さんから語られました。
スイッチを押してもらうハードルを下げるために日常的な作業で薄い快感があるものを心がけていることや、その場所がもっている魅力や個性をつかって作るなど、楽しい「スイッチ」の裏で、とても細やかに配慮されていることが印象に残りました。


SCRAP きださおりさん


講演形式のトリを勤めるのはSCRAPで数々の名作を作ってきた きださおりさん。
「心を動かす物語体験についてのおはなし」というテーマで制作時に考えている3つのこと

  1. 体験する人をどんな気持ちにさせたいか
  2. 入り口を作る
  3. 心が動く山場を作る

に沿って、きださんが作ってきた作品を解説。

時にネタバレまで踏み込んでの解説に、あの名作はこうして生まれたのかと納得。
また、聞いていて印象に残ったのが「1.体験する人をどんな気持ちにさせたいか」が非常にシンプルかつ明確なこと。そこがしっかりしているので、体験感がブレないのですね。

対談:我孫子武丸さん×三宅陽一郎さん

セミナーの最後を飾るのは、人気ミステリ作家の我孫子武丸さんと、ゲームAIの第一人者で日本デジタゲーム学会の三宅陽一郎さんの対談。
いわば、アナログ界×デジタル界対談ですが、我孫子さんも「かまいたちの夜」などでデジタルゲームにも深く関わっているだけあって、顔を合わせたのが初めてとは思えないような魅力的なやり取りに。

特に物語をどこまでAIで作れるかといった話は、我孫子さんがどのようなものであれば面白いものになりそうかというイメージに対し、三宅さんが最新の技術ではどこまでのことができるかを答えるなど、この組み合わせならではの応酬で非常に歯ごたえがありました。

途中からは、今までの講演者も登壇し、我孫子さんや会場の参加者からの質問に答える質疑応答が行われて、5時間を超えるセミナーも無事終了しました。

画像提供:E-Pin企画

セミナー終了後も、会場の閉場時間ギリギリまで登壇者や参加者同士の熱心な歓談があちこちで続き、熱量の高さを最後まで実感。
参加型イベントはまだまだいろいろな形で発展していくなと感じさせてくれたセミナーでした。

長々と書き連ねてしまいましたが、最後にきださんと城島さんのツイートを紹介して、このレポートを締めたいと思います。





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