2013年1月8日

『持ち帰り謎』の登場と今後の課題

(この記事はバズ謎制作連合(@busjack_info)のあっきーさんに寄稿していただきました。
これまで公演型のイベント制作に注力していた体験型謎解き制作団体が、公演に囚われない形態として作り始めた『持ち帰り謎』について、当事者の立場からの視点で解説していただいています)



持ち帰り謎とは


謎フェスにて出現した「持ち帰り謎」について、まとめたいと思います。

「持ち帰り謎」と言うのは、11/3(土)、11/4(日)に開催された「謎フェス」実施時に発生した単語です。従来の謎解きイベント,ARGイベントとは異なり、自宅等に持ち帰り、会場や公演時間等の制約を受けずにほぼ謎解きを完遂できる謎、であると言えます。

「持ち帰り謎」という単語自体は「イベントで買って持ち帰って解く」という性質上、謎フェスで発生しました。しかし、その原型となる「自宅で解ける謎」は、CDを聞いて謎を解く「コヨダレ探偵事務所」を始祖とし、それまでにも自宅で出来る謎としてSCRAPの「謎箱」やRDGの「缶バッチ謎」がありました。

謎フェスでは500円を中心として100~1000円で各団体、個人が販売を行いました。

また、謎フェス後もコミックマーケットのイベンティアブースにて1万円の「あかない金庫」が販売される等、まだ発展途上の状態です。


持ち帰り謎の特徴


持ち帰り謎が増加してきた理由としては、以下の要素があげられるでしょう。

1. コスト(人件費)が少なく済む

従来のリアルイベントですと、受付や司会はもちろんのこと、会場誘導、ヒント出し、音響担当等様々なスタッフが必要になります。が、持ち帰り謎に関しては必要がありません。最低、売り子人一人いれば成立します。

2. 会場が必要ない

従来のリアルイベントですと、当然お客様を集めるための会場が必要になりますが、その必要はありません。謎フェスの物販コーナーでも1団体あたり長机1/2分ほどの団体がほとんどでした。


上記2点の理由から従来のリアルイベントよりも参入障壁が低いために謎フェスでは主に個人制作を中心に増加したと言えるでしょう。

例えば、出展した一つの「バス謎製作連合」では謎フェス二日間で約200部弱を売り上げました。謎フェス全体の動員数が約500名の為、約4割の人が購入した計算になります。


しかし謎フェスでの成功の陰には新たな課題も浮き彫りになりました。

1. 購入後のアフターフォロー

従来の謎解きイベントの場合、プレイヤーやチームの進行度にバラつきが出てプレイヤーの満足度の差が広がりすぎないように暗躍と呼ばれるヒント出しのスタッフがいることが多いです。しかし持ち帰り謎は仕様上、プレイヤーの進捗を確認することが不可能に近いです。そして、謎フェスで販売された持ち帰り謎の多くのヒントを得る手段が「代表や公式アカウントに連絡して聞く」という「ヒントサイトを見る」という手段より多少能動性のある手段でした。

持ち帰り謎のプレイヤーの何割かは詰まるとそこで諦めてゲームをストップしてしまいましたが、そうした購入後のフォローも影響していたかもしれません。

その点で事前にヒントサイトを準備し、解答・解説も謎箱とともに同封していたSCRAPはアフターケアという意味では今の所、抜きんでていると思います。

2. 「没入感」「非日常」の希薄化

次に、持ち帰り謎のデメリットとして、ARGの魅力の一つである「没入感」「非日常感」は格段に低くなります。

従来のリアルイベントで起こりうる、知らない人との交流や、特別な場所に行く、実際に探索や行動するという「体験」がほとんど無いからです。


しかし、その裏返しとして持ち帰り謎は時間や場所の制約を受けず自分の好みのプレイスタイルでプレイできるので、「自分で目安の設定時間を作り、それを目標に取り組む」、「複数の人間で集まって解いていく」、「時間にとらわれずにヒントももらわずにひたすら一人で取り組む」果ては「自分が解いた後、自分が出題者となり他の人に挑戦させる」プレイヤーも出てきています。

このように従来のリアルイベントでは公演ごとに時間や、チーム戦or個人戦といった形式も決められてしまっているのに対し、「自分の好きな形式で解ける」=「自分の好きな体験を作り出すことができる」自由度が持ち帰り謎の魅力の一つと言えるでしょう。


持ち帰り謎の今後について


コスト面の理由から従来のリアルイベントに比べて参加障壁が低いために、今後も個人制作を中心に増加していくでしょう。

しかし現状では「体験」という点において、リアルイベントに劣る所があります。

しかし持ち帰り謎特有の「自由度」を活かし「没入感」や「非日常感」といった従来の「体験」に代わる付加価値を生み出していき、さらなる発展を遂げていくことに期待しています。

関連リンク
ARG情報局: リアルゲーム団体合同謎解き文化祭「謎フェス」11月3日・4日開催

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