ARG ってなんだろう?という方へ
ARG は Alternate Reality Game の略で、日本語では「代替現実ゲーム」と訳されることが多いようです。訳語からはあまりピンと来ませんね。
欧米では大規模な事例も多く実施されている ARG ですが、立場によって、いろいろな捉え方があるようです:
- 現実世界を舞台に、数百人〜数百万人規模でプレイするアドベンチャーゲーム
- 能動的な物語体験で口コミ効果を高めた、新しいバイラルキャンペーン手法
- とにかくみんなで盛り上がって楽しい謎解きのお祭り
- フェイクドキュメンタリー(事実っぽく撮った創作)+観客参加
- 作品世界の住人として推理に参加できる、ミステリー/サスペンス ドラマ
- 現実世界をより幸せに変革していくパワーを秘めた現実ハック法
このように多様な側面を持つ ARG の一番の特徴、それは「日常空間と物語空間が交差すること」。例えば、日常生活と地続きに、こんな体験ができるのが ARG です:
- 普段の生活をしているあなたの前に、ちょっとした「不思議」の穴が開いています。それは、動画サイトに上がった謎めいたムービーだったり、あるいは馴染みのサイトに掲載されたおかしな記事だったりするでしょう。
- その「不思議」にあなたが気づいて、検索してみたとします。その瞬間、あなたはゲームの参加者の一人となるのです。
- 広大なインターネット空間に隠された情報を少しずつ集め、組み立てていくと、裏に流れる大きな物語が見えてきます。
- やがて、物語の登場人物と交流を持つこともあるでしょう。キーアイテムを現実の街で捜すことだってあるかもしれません。大きな謎に、他の参加者と協力して立ち向かうこともあります。
- そして、そこで活躍するのは、コントローラで操作された主人公ではなく、あなた自身なのです!
どうでしょう?
ドキドキ、ワクワクを感じたのでしたら、あなたは ARG プレイヤーの素質アリ、です!
ARG のよくある間違い
よく間違えられるのですが、ARG はAR技術を使ったゲームのことではありません。カメラ映像に情報を重畳する AR 技術は Augmented Reality (拡張現実) の略で、ARG は Alternate Reality Game の頭文字です。また、Alternative Reality Game と書かれてしまうこともありますが、こちらも間違いです。alternative は、もう一つの、という意味ですから、現実とは違う、という意味合いになってしまいます。alternate reality だと、現実世界と物語世界を行ったり来たりするというニュアンスが出るのですね。
ARG の魅力
「ARG の魅力」ページより、いくつか実際の事例から、ARG の魅力的なポイントをご紹介します。- 現実と電話とネットと
- サイト上で発見した日時と GPS 座標のリストは、全米各地の公衆電話を示していた! 指定日時にその公衆電話へ行ってみると、突然電話が鳴り出す。おそるおそる出ると、電話の相手は宇宙船の AI であった。電話に出ることで Web 上でオーディオドラマが進展し、時にはプレイヤーと AI(を演じる役者)との会話も公開された。
- I Love Bees での事例
- 彼女たちを死なせるな
- 文化祭に向けてガールズバンド「都まんじゅう」を結成した高校生たち。彼女たちはTwitter上で日々の出来事をつぶやいていたが、好奇心で「血の人形の呪い」を調べ始めた直後から、悲劇が始まる。13日ごとに人が死ぬという「呪い」の正体は。そして、この悲劇から彼女たちを救うことはできるのか。
- Project:;COLD case.613 での事例
- キーアイテムを現実世界で探し回る楽しさ
- 古の測距法 Omphalos Code が指す距離と方角に従い、地図上にラビリンスを描くと、その中心は東京、神楽坂だった! 神楽坂周辺の画廊を探索するプレイヤー達は、ついに、五大陸に散らばる5つのリングの一つを発見する! 第一発見者は一抱えもある金属製リングを自宅に持ち帰ることに。
- The Lost Ring での事例
ARG の楽しさのポイント
ARG の楽しさは、この図に出ている「能動的な体験」「日常空間」「ナゾ解き」「お祭り」などのキーワードがポイントです。(もっと詳細な分析は『体験型エンタテインメントの要素と「ARG」の定義』を参照)
ぜひ、ARG がもたらす、自分で能動的に動いて体験する「生きた物語」を体験してください!
実際に遊んでみたい!
ARGはリアルタイム性の高いものが多く、タイミングが合わないと参加しにくいのが難点です。大規模なARG的なコンテンツが実施されそうな場合は、当サイトで紹介記事が出ますので、見逃さないようにチェックしてください。ARG の可能性に興味がある方へ
エキサイティングな体験を生み出す ARG は、それ自体がエンターテインメントコンテンツであると同時に、プロモーション手段としても有効です。欧米では、映画やテレビドラマの世界観を伝えるプロモーション手法として定着している他、ブランディングにも用いられています。
いくつか、海外の ARG 事例のムービーを貼ってみます。英語が聞き取れなくても、プレイヤーが楽しんでいる雰囲気や、いくつもの媒体を使ってリアリティを出している様子は分かるのではないでしょうか。
まず、バットマンの映画「ダークナイト」のプロモーション ARG「Why So Serious?」です。制作会社の 42 Entertainment は、この ARG で1000万人以上の参加者を得て、2009年のカンヌ国際広告祭のサイバー部門のグランプリを獲得しています。具体的な内容については、『事例紹介 映画「ダークナイト」ARG『Why So Serious?』』で解説しています。
Microsoft のゲーム「Halo2」のプロモーションの一環として 2004 年に行われた「I Love Bees」は、公衆電話に電話がかかってくるというギミックで、プレイヤーを熱狂させました。
さらに詳しく知りたい方へ
ARG の事例紹介
「ARG の魅力」ページには、代表的なARG事例を、魅力の要素別に切り出して掲載しています。興味を惹かれた事例を深く調べられるよう、可能な限りリンクをつけています。また、世界最大規模のARGをステップ毎に解説した『事例紹介 映画「ダークナイト」ARG『Why So Serious?』』も参考にしてください。
ARG の定義
ARG のきちんとした定義は未だになく、各人が「これは ARG だ」と思ったものを ARG と呼んでいるというのが実情です。そもそも、ジャンルの定義を厳密にすることはあまり意味がなく、体験として面白いかどうかが重要というのが我々の考えでもあります。
しかしながら、日本国内の体験型エンタメでは、SCRAP社のリアル脱出ゲームが大きな存在感を持っており、様々に論じる際にそことの区別が重要という背景があります。そのため、体験型エンタメ情報局では「謎解きを中核としている体験型謎解きゲームはARGに含めない」という用語の用法を行っています。
もう少し詳しく言えば、「代替現実感」および、それを支える「物語体験」や「共演感覚」に重点を置いている体験型エンタテインメントを「ARG」と呼んでいます。
ARG が持っている要素を分析して、どのような要素を包含していれば「ARG」と呼べるのかという検討を行った記事『体験型エンタテインメントの要素と「ARG」の定義』も参考にしていただければ幸いです。
ARG制作を行っている国内の組織・団体
2022年時点で ARG の制作を行っている国内の組織・団体の一覧です。作品公開順です。
- オフィス新大陸
- 2009年に『RYOMA: the Secret Story』を制作。以降も企業タイアップやTV企画などのARG案件を制作し続けている。
- エレメンツ
- 体験型エンタメ情報局編集人の石川淳一の会社。『アートと少女を巡る冒険』など。
- ラ・シタデール
- 『3D小説「bell」』のミッション制作や、LINEを使って体験を作れるナゾトキものがたりbotのシステム開発など。
- ストーリーノート
- 『Project:;COLD』シリーズの総監督藤澤仁氏の会社。ARGの制作受託を受けているかは不明。
- TVT
- 『神椿市建設中。EMERGENCE』のゲームデザインおよびQ制作を担当。神椿市建設中。はARGを名乗ってはいないが、体験内容としては極めて近しい。
さらなる情報源
ARG の解説は、英語版 Wikipedia の Alternate reality game の項目にて、お腹が一杯になるほど詳細に記載されていますので、さらに深く知りたい方はチャレンジしてみてください。
また、海外の最新情報は ARGNet が確実な情報源です。