2020年12月10日

2020年のARGのカタチ!? 不可逆性SNSミステリー『Project:;COLD』始動


2020年は、日本独自ARGがリブートする元年となるかも!? と思ってしまうほど、新しい切り口でのARG的な体験型エンタメが続いているこの冬ですが、本命かもしれない企画が進行中です。

これまでの流れ


スタートは、11月1日にTwitterに投稿された、1本の自己紹介動画でした。
平塚市の高校の文化祭実行委員の女の子が、文化祭に向けて即席のバンドを組んだ、という微笑ましい動画です。
特徴は、明らかにCGであること。いわゆる VTuber の技術を使って撮影されたもののように見えますが、本人は自分が VTuber であるとは決して言いません。

11月の上旬は、彼女の日常や、バンドメンバーの紹介のツイートで過ぎていきます。
しかし、気になるのが、彼女たちの自己紹介動画に紛れ込む、不安をかき立てるノイズ。

ある人が、最初の動画に含まれるノイズがモールス信号ではないかと気づきます。
「カノジョタチヲシナセルナ」

このメッセージの意味を誰も理解できないまま、文化祭は無事に終わりますが、その数日後、事態は急展開を迎えます。
5千リツイート、1.5万いいねを集めたこのツイートが、この不可逆性SNSミステリーの真の開幕でした。

その翌日、バンドメンバーの一人から、フォロワーへ、「私たちを、助けてください」というメッセージが発信されます。


死の数日前に、彼女たちが暇つぶしに首を突っ込んだ『血の人形事件』という呪いの噂。

それを解呪する手がかりが謎となって彼女たちの前に立ち塞がります。

例えば、金庫の鍵が暗号になっていたり・・・


あるいは、金庫が開いたと思ったら、その中からも暗号の書かれた紙が出てきたり。
そうこうしているうちに、フォロワーの懸命の解読の甲斐あって、呪いを解く方法が明らかになり、
絵馬を奉納して、無事解決。
というのが12/1までの動きでした。

最新スタイルARGへの期待の高まりとプレスリリース


VTuberの技術を使いながらも、あくまでもリアルな平塚市の高校生として振る舞い続けるTwitterアカウント群。そこでリアルタイムに紡がれていく呪いの悲劇の物語。そして、フォロワーが解かないと解決しない謎。

これはまさに2020年の最新のARGの形!と盛り上がっていった、まさにその最中に来たのが、不可逆性SNSミステリー『Project:;COLD』の大々的なプレスリリースです。公式サイトの公開の他、同日に MoguraVRKAI-YOU に記事が上がります。同時に制作スタッフやキャストが Twitter で一斉に告知を始めました。


クリエイター/キャストのリストによれば、総監督・脚本は未だに不明なものの、例えば、映像監督の川サキ氏は、KAMITSUBAKI STUDIOのバーチャルシンガー「花譜(KAF)」のビジュアルディレクションを務めていらっしゃるなど、実績のあるスタッフで固められています。体験型エンタメ業界としては、今回は個人での参加となるきださおりさんは、SCRAPや東京ミステリーサーカスでの多数の体験型謎解きイベントのディレクションの他、ARG情報局でも事例紹介している「のぞきみカフェ」など、より体験を重視した体験型コンテンツを積極的に作っている第一線の制作者です。また、謎制作者には謎解き第一次ブームからのベテラン、眞形さんのお名前も。今後も安定した体験が期待できそうです!

12月1日以降の動き


12月1日〜12月9日までの間の動きをざっくりご紹介しておくと、彼女たちの文化祭にゲストで参加したらしい「ずっと真夜中でいいのに。」の新曲「勘ぐれい」のMVが公開されました。


このMVの中に、いくつかの謎がしかけられており、 @binarycity_i というアカウントや、ノイズ混じりの謎の画像が見つかったりしております。

12月10日、事件は動く……?


いったん、表だった事件は小康状態になっていますが、実は不穏な情報があります。
今回の事件について詳しいイマオカ・オカルト倶楽部の情報によると、


2020年に平塚市で起こっている連続怪死事件「血の人形・再来事件」の発生日付をよく見ると、1件の例外を除いて13日周期で事件が発生しているのです。最後に事件が起こった11月27日から、今日12月10日で13日。もしかしたら、何か、また事件が起こってしまうのでしょうか……。

気になる方は、ぜひ融解班(公式が設定している参加者の呼称)となって、Twitter の #みやまん謎解き を覗いてみてください。
あるいは、最初から追いかけたい方は、 #みやまん謎解き 追いかけ用まとめ その1 - Togetter
 に関連ツイートをまとめましたので、どうぞ。

その他の情報源

他に参考になる他メディアの記事がいくつかありますので、ご紹介しておきます。先日、SIG-ARG関係者の対談記事を載せていただいた Real Sound さんの「考察飛び交う『Project:;COLD』なぜ話題に? VTuber&ARGの視点から考える」という記事では、VTuber ファンの視点からの本作の見え方について、とても分かりやすくまとまっています。
VTuber とは一言も言っていないにせよ、スタッフも、利用しているメディアも、コンテンツの内容も、VTuber の文脈ととても近いので、VTuber ファンは「考察系VTuber」という枠組みで受容した、という様子が分かります。

また、「SNSミステリー『Project:;COLD』有志による考察Discordの熱量にやられた ― 参加者は1400人を超え、1日に1万件書き込まれる日も」では、参加者が自主的に立ち上げた(はずの)Discordサーバが非常に盛り上がっているということが、実際の投稿数のグラフと共に掲載されています。実際、Discord が盛り上がりすぎて Twitter の公式に設定されたハッシュタグの流量が減ってしまうという影響も出ている状況です。

最後に

今回の記事では、発生している事象の紹介を中心にお送りしましたが、この「みやまん謎解き」を通じて、いくつか興味深い議論ができそうですので、稿を改めて論じたいと考えています。具体的には以下のようなトピックです。
  • 多くの人に感情を消費させるようなラビットホールの提示は「正しい」のか
  • 「人の死/自死」に関する議論を深い没入感で提示し続けることの是非
  • 代替現実感/没入感をできるだけ失わせずに、よりマスのユーザに分かりやすくリーチすることは可能か
  • VTuber(Virtual Being) と ARG の相性は良いのか悪いのか
  • ARGでキャラクターをTwitterに配置する難しさと解決策
    • コミュニケーション可能性の期待値コントロール
    • 情報管理が完璧に出来る人間がすべてのアウトプットを監修する現実性
  • ARGのマネタイズはやっぱり難しいのか(参考ツイート
  • どこからともなく出現する、偽アカウントの傾向と対策、あるいは楽しみ方・楽しませ方
気になるトピックやご意見などございましたら、Twitter の @epi_x までお寄せください。

それでは、12月10日が平和裏に過ぎ去ることを願いつつ……。

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