●『仮面舞踏会』著:キット・ウィリアムズ、 訳:坂根 厳夫
1979年に発行されたイギリスの謎解き絵本です。
ストーリーは要約すると、月の女神が太陽の神に愛の告白をするため、金の首飾りを作って、野ウサギにそれ託すというものです。この野ウサギ、金の首飾りを太陽の元へ届けるため、火の中、水の中、大冒険を繰り広げるのですが、ようやく太陽の元へたどり着いたと思ったら、金の首飾りをうっかり落としてしまったことに気がつきます。この金の首飾りはいったいどこへいってしまったんでしょうか……?
さて、この金の首飾り、実は本の裏表紙に写真が掲載されています。
そう、実在するのです。この首飾りは著者によって、地球上のどこかに埋められており、絵本のところどころに隠されている多くの謎をすべて解き明かすと、その詳細な隠し場所が出てくるという仕掛けになっています。当時、世界各国で翻訳出版され、世界中でこの金の首飾りを探す宝探しブームが巻き起こったそうです。
誰がどのようにこの首飾りを見つけたかはここでは敢えて解説しませんが、とっても夢があって面白い試みの絵本ですよね。
●『?(書名を探す絵本)』著:キット・ウィリアムズ、 訳:坂根 厳夫
こちらはなんとも意味深なタイトルですが、上記の『仮面舞踏会』と同じ作者による謎解き絵本第2弾です。1984年発行。今度はなんとタイトルが存在せず、本の中の謎を解くとそのタイトルが分かるという仕掛けです。表紙は美しい宝石で飾られた蜂の巣型の木箱の写真になっているのですが、謎を解き、さらに作者からの難題に答えた人の中から1人にこの木箱が贈られたそうです。
もちろん謎解き絵本としても面白いですが、美しい挿絵を眺めているだけでも楽しい、素敵な絵本です。これらの素晴らしい絵、寄木細工、謎解きなどすべてを作り上げたキット・ウィリアムズがどんな人なのか気になるかと思います。角川書店から発行された日本語版の巻末の解説は必見です。
●『魔術師タンタロンの12の難題』著:スティーブ ジャクソン、 訳:柿沼 瑛子
イギリスのゲームデザイナーで、ゲームブック『火吹山の魔法使い』や『ソーサリー』四部作、ミニチュアゲーム『ウォーハンマー』で有名なゲームズワークショップ社を設立したスティーブ・ジャクソンによる傑作謎解き絵本です。(TRPG『ガープス』の作者として有名なアメリカのゲームデザイナー、スティーブ・ジャクソンは同名の別人です。)
海を荒らす悪魔魚に、宝を守るドラゴン、呪いでカエルに変えられた王子など、様々な問題に見舞われたガランタリア王国を救うため、宮廷魔術師タンタロンはこの12の難題を解決できる冒険者を求め、国中に告知を出します。あなたはそれに応えた冒険者の1人で、その知力の限りを尽くし、すべての難題に挑戦します。果たしてあなたはこの王国を救うことができるでしょうか?
上記の『仮面舞踏会』や『?(書名を探す絵本)』と違って見開き2ページごとにパズルが登場します。1つずつクエストを問いていく形式ですので、RPGのような達成感があります。また、12の難題を正しく解いた者だけが挑戦できる最後の問題もあります。驚きの展開が待っていますので、ぜひ自分の目で確かめてみてください。ただし、日本語版は残念なことにこの最後の問題にバグがあるようなので、ネット上の解説などを参考に解いてみることをお勧めします。
●『クエスト・ブック 魂の宝箱と12の呪文』著:イアン・リビングストン、 訳:安田 均
上記のスティーブ・ジャクソンと一緒にゲームズ・ワークショップを設立し、共著で『火吹山の魔法使い』を執筆したイアン・リビングストンの謎解き絵本です。彼の著作だと『死のワナの地下迷宮』(Deathtrap Dungeon)などが有名で、日本では2008年にHJ文庫Gから『デストラップ・ダンジョン』としてリメイクされています。ライトノベル風のイラストが付いて、若い人でも読みやすくなっているのでそちらを読んでみるのもいいと思います。
こちらは上記の『魔術師タンタロンの12の難題』に近い構成ですが、人間世界に侵攻してきたデーモン軍と人間との戦いのストーリーが12枚のイラストともに展開されます。
謎解き絵本にはこのほかに日本のリアル脱出ゲームのSCRAPさんが作った『幽霊城からの脱出』というものもあります。こちらは比較的手に入りやすいかと思いますので、興味がある方はぜひ挑戦してみてください。
(文章:H.M.)