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2015年9月9日

【ARG的ブックガイド】謎解き絵本の魅力

今回はARGの参考になる本として、謎解き絵本を紹介したいと思います。古いものが多いので見つけにくいかとは思いますが、古書店などで見かけたらぜひ手に入れてみてください。

●『仮面舞踏会』著:キット・ウィリアムズ、 訳:坂根 厳夫




1979年に発行されたイギリスの謎解き絵本です。
ストーリーは要約すると、月の女神が太陽の神に愛の告白をするため、金の首飾りを作って、野ウサギにそれ託すというものです。この野ウサギ、金の首飾りを太陽の元へ届けるため、火の中、水の中、大冒険を繰り広げるのですが、ようやく太陽の元へたどり着いたと思ったら、金の首飾りをうっかり落としてしまったことに気がつきます。この金の首飾りはいったいどこへいってしまったんでしょうか……?

さて、この金の首飾り、実は本の裏表紙に写真が掲載されています。
そう、実在するのです。この首飾りは著者によって、地球上のどこかに埋められており、絵本のところどころに隠されている多くの謎をすべて解き明かすと、その詳細な隠し場所が出てくるという仕掛けになっています。当時、世界各国で翻訳出版され、世界中でこの金の首飾りを探す宝探しブームが巻き起こったそうです。
誰がどのようにこの首飾りを見つけたかはここでは敢えて解説しませんが、とっても夢があって面白い試みの絵本ですよね。


●『?(書名を探す絵本)』著:キット・ウィリアムズ、 訳:坂根 厳夫


こちらはなんとも意味深なタイトルですが、上記の『仮面舞踏会』と同じ作者による謎解き絵本第2弾です。1984年発行。今度はなんとタイトルが存在せず、本の中の謎を解くとそのタイトルが分かるという仕掛けです。表紙は美しい宝石で飾られた蜂の巣型の木箱の写真になっているのですが、謎を解き、さらに作者からの難題に答えた人の中から1人にこの木箱が贈られたそうです。

もちろん謎解き絵本としても面白いですが、美しい挿絵を眺めているだけでも楽しい、素敵な絵本です。これらの素晴らしい絵、寄木細工、謎解きなどすべてを作り上げたキット・ウィリアムズがどんな人なのか気になるかと思います。角川書店から発行された日本語版の巻末の解説は必見です。


●『魔術師タンタロンの12の難題』著:スティーブ ジャクソン、 訳:柿沼 瑛子



イギリスのゲームデザイナーで、ゲームブック『火吹山の魔法使い』や『ソーサリー』四部作、ミニチュアゲーム『ウォーハンマー』で有名なゲームズワークショップ社を設立したスティーブ・ジャクソンによる傑作謎解き絵本です。(TRPG『ガープス』の作者として有名なアメリカのゲームデザイナー、スティーブ・ジャクソンは同名の別人です。)

海を荒らす悪魔魚に、宝を守るドラゴン、呪いでカエルに変えられた王子など、様々な問題に見舞われたガランタリア王国を救うため、宮廷魔術師タンタロンはこの12の難題を解決できる冒険者を求め、国中に告知を出します。あなたはそれに応えた冒険者の1人で、その知力の限りを尽くし、すべての難題に挑戦します。果たしてあなたはこの王国を救うことができるでしょうか?

上記の『仮面舞踏会』や『?(書名を探す絵本)』と違って見開き2ページごとにパズルが登場します。1つずつクエストを問いていく形式ですので、RPGのような達成感があります。また、12の難題を正しく解いた者だけが挑戦できる最後の問題もあります。驚きの展開が待っていますので、ぜひ自分の目で確かめてみてください。ただし、日本語版は残念なことにこの最後の問題にバグがあるようなので、ネット上の解説などを参考に解いてみることをお勧めします。

●『クエスト・ブック 魂の宝箱と12の呪文』著:イアン・リビングストン、 訳:安田 均



上記のスティーブ・ジャクソンと一緒にゲームズ・ワークショップを設立し、共著で『火吹山の魔法使い』を執筆したイアン・リビングストンの謎解き絵本です。彼の著作だと『死のワナの地下迷宮』(Deathtrap Dungeon)などが有名で、日本では2008年にHJ文庫Gから『デストラップ・ダンジョン』としてリメイクされています。ライトノベル風のイラストが付いて、若い人でも読みやすくなっているのでそちらを読んでみるのもいいと思います。

こちらは上記の『魔術師タンタロンの12の難題』に近い構成ですが、人間世界に侵攻してきたデーモン軍と人間との戦いのストーリーが12枚のイラストともに展開されます。


謎解き絵本にはこのほかに日本のリアル脱出ゲームのSCRAPさんが作った『幽霊城からの脱出』というものもあります。こちらは比較的手に入りやすいかと思いますので、興味がある方はぜひ挑戦してみてください。


(文章:H.M.)

2015年9月2日

【海外ニュース】ナイアンティック・ラボのARゲームだけではない!『ENDGAME』の全容

『ENDGAME』といえば、『Ingress』で日本でも有名なナイアンティック・ラボが新たな位置情報ゲーム、ARゲームを製作、そのβテスト登録が行われるということで2015年3月頃には日本でもけっこう話題になりました。しかしながら、『ENDGAME』のプロジェクトは多岐にわたっており、その全容を紹介した記事はあまり見かけません。
そこで、今回はそれらを紹介したいと思います。

まずは、先日「ARG情報局」でも第2部の出版予定を紹介した小説版。
小説は著者ジェームズ・フライとニルス・ジョンソン=シェルトンが、出版社(米国ではハーパー・コリンズ)を中心となって展開しています。小説内の謎を中心に賞金総額50万ドルを争う、前例で言えば『サーティーナイン・クルーズ』や『キャシーの日記』の系譜に連なるARG小説です。第1部が『ENDGAME: THE CALLING』(これは日本でも同時翻訳されました)、第2部が今秋に出版予定の『ENDGAME: SKY KEY』です。


その小説と世界観を同一にしながらも独自の展開をしているのが、ナイアンティック・ラボが制作しているふたつのタイトルです。まず、ひとつめがインターネットを中心に映像や資料などを基に物語と謎を追う王道ARGとも言える『ENDGAME: ANCIENT TRUTH』です。こちらはつい最近、2015年7月末にゲームが終わりました。



ふたつめがIngressのシステムを元にARゲームとして、今秋にリリースが予定されている『ENDGAME:PROVING GROUND』です。前述したように日本で『ENDGAME』が取り上げられる場合、このゲームのことを指している場合が多いです。
こちらは今年の3月からベータテストへの登録が始まっていますが、もともとGoogle謹製ということでGoogle+のアカウントで、上記の『ANCIENT TRUTH』とユーザーアカウントを同一にしています。つまり、ベータテストの参加=ANCIENT TRUTHへの参加だったわけです。なお、実際には『ANCIENT TRUTH』の謎解きで上位に入ったプレイヤーに優先的にベータテストの承認が行われるとナイアンティックは明言しています。


これ以外に20世紀FOXで映画化の話も進んでいるはずですが、こちらはまだほとんど情報がない状況です。
ひょっとしたら小説の1作目でARG、2作目でARゲーム、3作目(完結)で映画と連動という流れを考えているのかもしれません。

いかがだったでしょうか?
今秋は『ENDGAME: SKY KEY』の出版と、(予定通りなら)『ENDGAME:PROVING GROUND』のリリースが行われ、『ENDGAME』2度目の盛り上がりが期待されます。

『ENDGAME: SKY KEY』の日本での翻訳や、『ENDGAME:PROVING GROUND』が『Ingress』のように日本語化されるのかは不明ですが、ぜひ期待したいところです。
(文章:石川 淳一 情報協力:澤田 典宏)

関連リンク
The Opening Chapters of James Frey's Sky Key: Endgame
エンドゲーム コーリング(小説)日本語版サイト
ARG『ENDGAME: ANCIENT TRUTH』公式サイト
ARG『ENDGAME: ANCIENT TRUTH』Twitter(ARGの製作現場写真がたくさん紹介されています)
ナイアンティックラボ公式サイト